
しびとのこい
しびとのこい
千年ほど昔の、中国の話でございます――― 科挙を受験するために上京する一人の青年。 山道に彷徨い、辿り着いた閑村で、一夜の宿を求める。 青年が旅の疲れに眠りに落ちた夜更け過ぎ―――彼の臥所に潜り込んでくる者がいた。 青年の鼻孔をくすぐる、あまい微香。 若い女の芳香が――― この世のものとも思われない少女の、可憐で儚げなその笑みに、一瞬で青年は心奪われる。 夜明け前に姿を消してしまったその人は、この家の娘だろうか? 翌朝、礼を述べるとともに、夜に出会った少女の事を尋ねる。 すると、家の主の顔色が変わる。 「実は、当家に一人娘がいたのですが・・・・・・」 ふとしたはずみで、川に落ちて溺れ死んでしまったという。 この村では、処女のまま亡くなった女性の霊は、名残惜しんでこの世をさ迷い歩くと言われている。 「娘も、きっと、そうして現世を彷徨っているのでしょう。 憐れとお思いならどうか娘の貞操を奪って、成仏させてやってくれないでしょうか」 その夜、少女の死体と同じ寝台の中で、青年は眠る。 そして、夜更け過ぎ、冷たい少女の骸が動き出す―――
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